キャッシュレス決済別 お金を使っている感覚の違いが衝動買いに与える影響を比較解説
はじめに:キャッシュレス決済の普及と「お金を使っている感覚」の行方
近年、キャッシュレス決済は私たちの生活に深く浸透し、日々の支払いを便利でスムーズなものにしています。スマートフォン一つで様々な支払いが完結するようになり、現金を持ち歩く機会も減少しました。
しかし、その便利さの一方で、「ついつい買いすぎてしまう」「衝動買いが増えた」といった悩みを耳にすることも増えています。キャッシュレス決済は物理的な現金のやり取りがないため、「お金を使っている」という感覚が薄れやすいという指摘があります。この感覚の違いは、私たちの消費行動、特に衝動買いにどのように影響するのでしょうか。
この記事では、主要なキャッシュレス決済方法ごとに、「お金を使っている感覚」の違いが衝動買いに与える影響を比較解説し、衝動買いを防ぐための対策についても考察します。賢いキャッシュレス決済の選び方、使い方の一助となれば幸いです。
キャッシュレス決済方法別のお金を使っている感覚と衝動買いへの影響
様々な種類のキャッシュレス決済がありますが、ここでは代表的な方法を取り上げ、それぞれの仕組みと衝動買いへの影響の関係性について解説します。
1. クレジットカード
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仕組みと「お金を使っている感覚」: クレジットカードは「後払い」の仕組みです。買い物をしたその場で口座からお金が引き落とされるわけではなく、後日まとめて請求されます。このため、買い物をしている瞬間には「お金が減った」という感覚が非常に薄いのが特徴です。サインや暗証番号入力、あるいはタッチ決済といった簡単な手続きで支払いが完了するため、物理的なお金のやり取りがなく、お金を使っている実感が得にくい傾向があります。
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衝動買いへの影響: お金を使っている感覚が薄いため、財布の紐が緩みやすいという側面があります。特に、手元に現金がなくても高額な買い物ができてしまうことや、支払いが先延ばしになる仕組みが、衝動的な判断を後押しする可能性があります。「今すぐお金が減るわけではない」という心理が働きやすく、計画性を欠いた買い物につながることが考えられます。
2. デビットカード
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仕組みと「お金を使っている感覚」: デビットカードは「即時払い」の仕組みです。カードを利用すると、代金が登録した銀行口座からほぼ即座に引き落とされます。この点はクレジットカードとの大きな違いです。支払いのたびに口座残高が減少するため、現金払いほどではありませんが、「お金を使っている」という感覚はクレジットカードよりも得やすいと言えます。利用時に口座残高を確認する習慣があれば、よりお金の流れを意識しやすくなります。
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衝動買いへの影響: 口座残高以上の利用は原則としてできないため、残高という物理的な制約があります。また、即時引き落としであるため、買い物のたびにお金が減ることを比較的意識しやすく、クレジットカードに比べて衝動買いを抑える方向に働く可能性があります。ただし、物理的な現金の減少ではないため、利用頻度が高いと感覚が麻痺する可能性もゼロではありません。
3. QRコード決済・バーコード決済
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仕組みと「お金を使っている感覚」: QRコード決済やバーコード決済には、いくつかの支払い方式があります。
- 事前チャージ型: 事前に銀行口座やクレジットカード、現金などでアプリにチャージした残高から支払う方式です。チャージする際に一度お金を意識しますが、支払い時はアプリ画面上の残高表示を確認するか、通知で確認する形になります。利用残高が減っていく様子を見ながら支払うため、ある程度お金を使っている感覚はありますが、現金チャージでない場合は物理的なやり取りはありません。
- 後払い型: クレジットカードと同様に、紐付けたクレジットカードや独自のシステムで後日まとめて請求される方式です。この場合は、クレジットカードと同様にお金を使っている感覚が薄くなりやすいと言えます。
- 銀行口座連携型(即時払い): 銀行口座と連携し、支払い時に即時口座から引き落とされる方式です。デビットカードに近い感覚ですが、スマートフォンの操作のみで完了するため、物理的なカードの提示等がない点が異なります。
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衝動買いへの影響: 支払い方式によって衝動買いへの影響が異なります。事前チャージ型や銀行口座連携型は、残高や口座を意識する機会があるため、クレジットカードの後払い型に比べれば衝動買いを抑制する傾向があるかもしれません。しかし、スマートフォン一つで簡単に支払いが完了する手軽さは、衝動的な購入のハードルを下げる可能性も持ち合わせています。利用時のサウンドやアニメーションなども、お金を使っているというよりも「支払いが完了した」という達成感に繋がりやすく、お金が減った感覚を希釈する要因となり得ます。
4. 電子マネー(交通系、流通系など)
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仕組みと「お金を使っている感覚」: 電子マネーは事前チャージ(プリペイド)型が主流です。駅の券売機やコンビニなどで現金またはクレジットカードでチャージし、読み取り端末にタッチして支払います。チャージ時に金額を意識しますが、支払い時はカードやスマートフォンをかざすだけです。読み取り端末に残高が表示される場合もありますが、多くは金額が表示されるだけで、残高を確認しないまま利用することも可能です。小額決済での利用が多く、頻繁に利用するうちに、残高をあまり意識しなくなる傾向があります。
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衝動買いへの影響: 少額決済の手軽さから、本来なら購入をためらうような小さな衝動買いにつながりやすいという側面があります。「〇〇円くらいならいいか」と気軽に利用し、塵も積もれば山となる、という形で予期せぬ支出につながることが考えられます。チャージした金額の範囲内でしか使えないという物理的な制約はありますが、残高を意識しないまま利用していると、お金を使っている感覚は薄れやすいと言えます。
キャッシュレス決済で衝動買いを防ぐための対策
キャッシュレス決済は便利ですが、衝動買いのリスクを完全にゼロにすることは難しいかもしれません。しかし、意識的な対策を講じることで、そのリスクを軽減することは可能です。
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利用履歴・明細をこまめに確認する習慣をつける: お金を使っている感覚が薄れても、利用履歴や明細を確認することで、いつ、どこで、いくら使ったかを客観的に把握できます。これにより、自分自身の消費行動を振り返り、衝動買いの傾向を把握するのに役立ちます。多くのキャッシュレス決済アプリやウェブサイトで利用履歴を確認できます。
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予算を設定し、利用額を管理する: 月々や週ごとの支出に予算を設定し、その範囲内でキャッシュレス決済を利用することを心がけます。多くの家計簿アプリや、決済アプリ自体にも利用額の通知機能などがありますので、これらを活用すると良いでしょう。
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事前チャージ型は計画的にチャージする: QRコード決済や電子マネーの事前チャージ型を利用する場合は、使いすぎを防ぐために、必要以上に多くの金額を一度にチャージしないようにします。使いたい分だけチャージするなど、意識的なコントロールが有効です。
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後払い型(クレジットカードなど)は利用上限額を見直す: クレジットカードなどの後払い型決済では、自身の収入や支出パターンに合わせて、利用上限額を見直すことも衝動買い対策の一つとなります。
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本当に必要か一度立ち止まって考える習慣をつける: キャッシュレス決済はスピーディーな支払いが可能ですが、支払い手続きに入る前に「本当にこの買い物は必要か」と一度立ち止まって考える時間を持つことが大切です。
まとめ
キャッシュレス決済は、その種類によって「お金を使っている感覚」の度合いが異なります。後払い型のクレジットカードは感覚が薄れやすい傾向にあり、衝動買いにつながりやすい側面があります。一方、即時引き落とし型のデビットカードや、残高を確認しながら使う事前チャージ型の決済は、比較的お金の流れを意識しやすいと言えます。
しかし、どの決済方法であっても、物理的な現金のやり取りがないという点では共通しており、現金に比べてお金を使っている感覚は薄れやすい可能性があります。重要なのは、決済方法の特性を理解した上で、利用履歴の確認や予算管理といった対策を講じることです。
キャッシュレス決済を賢く利用することは、単に支払いの手間を省くだけでなく、自身の消費行動をより良く管理することにも繋がります。この記事でご紹介した情報が、それぞれのライフスタイルに合った決済方法を選び、計画的な消費を実践するための一助となれば幸いです。